――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2020年に活躍が期待される若手イケメン俳優を選出。EBiDANやEXILEなどから要注目の3名が選ばれた。
1位 須藤蓮(スターダストプロモーション)
とにかく作品に恵まれていて、おいしい役が続いている須藤蓮。特にNHKに愛されているのだが、注目されるきっかけとなったのは、2018年にNHK京都放送局で作られた単発ドラマ『ワンダーウォール~京都発地域ドラマ~』(渡辺あや脚本)。ある大学の学生寮をめぐって大学と学生の間で起きた反対運動の内幕を描いた作品だが、須藤は争いが苦手な記録係の大学生・キューピーを演じた。何だか頼りない男の子だなぁ、と気になっていたら、今年は映画5本、ドラマ5本に出演。
中でも注目すべきは朝ドラの『なつぞら』と大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』というNHKを代表する大作に出演していることだ。どれだけNHKに愛されてるんだ? 線の細いインテリ風の男を演じることが多く、この2作も出番こそ少なかったが、確実に存在感を示していた。
一方、FODで先行配信されたドラマ『JOKER×FACE』(フジテレビ系)では、口は立派だが全く面白くない動画配信者のレンを演じた。見た目はイケメンなのにイマイチぱっとしない男で、須藤はこういう“小綺麗だけど中身がない男”を演じさせるとピカイチの若手と言えるだろう。突出した個性があるわけではないが、これだけ話題作にオファーされるということは、俳優として何かを持っているのだと思う。小さい役が続いているものの、2020年は一気にブレークするかもしれない。
2位 森崎ウィン(スターダストプロモーション)
2位の森崎ウィンは、須藤と同じスターダストプロモーション所属。同事務所の男性アーティスト集団「EBiDAN」のダンス&ボーカルユニット「PRIZMAX」のメンバーとして活躍する傍ら、俳優としてはスティーブン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』でハリウッドデビューを果たしている。
今年は、『淵に立つ』や『よこがお』といった映画で知られる深田晃司監督が手掛けたドラマ『本気のしるし』(メ~テレ)で主演の辻一路を演じ、この辻から漂う虚無感が実に素晴らしかった。おもちゃと花火を取り扱う会社に勤めている辻は、同僚の女性社員二人と付き合っている二股状態。仕事もできて、同僚からは「仕事抜きで今度飲みましょう」みたいなことを言われて愛想よくしているが、一人になると「めんどくさい」とつぶやく。物語冒頭にそんなシーンが描かれ、その姿を見た瞬間、辻の抱えている虚無を感じてゾワッとした。
そんな辻が、葉山浮世(土村芳)という謎の女性と出会ったことで、おかしな方向へと転がっていく。主体性のない無自覚な態度ゆえに男を惑わし、次から次へとトラブルを呼び込む浮世のおかしさに序盤は目が行くが、ずっと見ていると、一見まともに見える辻の抱える虚無感や、浮世にイラっと来た瞬間に露呈する暴力性の方が、実は何倍もヤバいのではないかと、目が離せなくなる。
監督の深田は、「辻も浮世も自分が何をやっているかをすべて理解して行動しているわけではない。そもそも人間は自分が何をやっているかわからないものだ」という演出方針で演技指導をしたとインタビューでこたえていた。わからない人間を演じるという難しいオーダーに見事に応えた結果、原作の同名漫画(小学館刊)とは異なる不気味で生々しい辻が出来上がったのだろう。『本気のしるし』以降、どんな役を演じるのか楽しみである。
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2020-01-01 10:00:00Z
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