2020年1月18日,天王州 銀河劇場で,舞台「鬼滅の刃」が幕を開けた。原作は吾峠呼世晴氏が週刊少年ジャンプで連載中の漫画作品で,コミックスの累計発行部数は2500万部を突破(2019年12月現在),その熱狂的な人気と勢いは,もはや社会現象と呼んでもいいほどだ。
それだけに,たとえ観劇予定がない人でも,本公演は多くの人々から期待と注目を集めているはず。ここでは,初日の公演に先駆けて行われたゲネプロの模様をお届けしたい。ネタバレはできるだけおさえつつ,見どころについて紹介していくつもりだ。
なお,筆者はこのブームで遅ればせながらようやく原作を読み,今では本誌連載も追いかけるファンの1人となった。原作ファン目線のレポートになることを,最初にお断りしておきたい。
(C)舞台「鬼滅の刃」 製作委員会 2020
時は大正、日本。
炭を売る心優しき青年・炭治郎は、ある日鬼に家族を皆殺しにされてしまう。
さらに唯一生き残った妹の禰豆子は、鬼に変貌してしまった。
絶望的な現実に打ちのめされる炭治郎だったが、妹を人間に戻し、
家族を殺した鬼を討つため、“鬼狩り”の道へ進む決意をする。
人と鬼とが織りなす悲しき兄妹の物語が、今、始まる――!
原作を知る人なら登場キャラクターの名前を見るだけで察しがつくと思うが,本作は原作における比較的序盤の部分を舞台化している。セリフそのものやストーリーの流れはほとんど変わっておらず,エピソードの編集も最小限に抑えられている。
おなじみの名セリフや,シビアな物語の中にふと現れるシュールなギャグ,人間キャラクターだけでなく鬼になってしまった者のエピソードなども丁寧に描かれ,「こんなに細かいところもおさえてくれるのか!」と,原作ファンなら思わずテンションが上がってしまう箇所は非常に多い。
ちょっと驚くくらい原作に忠実なのは視覚的な部分もそうで,どうしても生身の人間の動きやセットだけでは表現できないところは,プロジェクションマッピングや小道具,さらに照明などを駆使することで,“鬼滅の世界”を構築している。静と動,緊張と緩和,積もる雪の白と血の赤など,次々と切り替わる空気や色が印象的だ。
あえて原作の漫画やアニメと異なるところを挙げるとすれば,キャラクターの心情や風景などを「歌」で描いたところだろう。もしかすると,原作を知っている人ほど「鬼滅の舞台で歌?」と疑問に思うかもしれず,筆者も観劇前は,どのような感じになるのかまったく想像できなかったのだが,オープニングの時点でその疑問はすっかり吹き飛んでしまった。
本作では歌や音楽の持つ力,上記の視覚効果,オリジナリティあふれる殺陣の表現などが1つになって「まったく新しい『鬼滅の刃』の世界」を構築しているのだ。見たことのない鬼滅だが,これは間違いなく鬼滅の世界の1つ。脚本および演出の末満健一氏,音楽の和田俊輔氏のほか,すべての制作陣に,原作に対する深い愛とリスペクトを感じた。
ではここから,メインとなるキャラクターについて簡単に述べたい。鬼になってしまった少女・竈門禰豆子(演:髙石あかり)は,セリフがほとんどない代わりに,叫びや激しいアクションが必須となるキャラクターだ。だが,少女らしいかわいらしさ(時折見せる無邪気な仕草は必見!)も荒々しさも同居した,紛うことなき禰豆子そのものだった。
序盤で主人公と妹の前に現れる冨岡義勇(演:本田礼生)は,序盤ゆえに大きな見せ場はないものの,所作の美しさや存在感で強烈なインパクトを残す。彼のかつての師である鱗滝左近次(演:高木トモユキ)は,厳しさの中にふと現れる優しさが光り,まさに原作どおりの「鱗滝さん」の安心感だ。珠世(演:舞羽美海)と愈史郎(演:佐藤永典)のコンビはミステリアスさとコミカルのさじ加減が絶妙で,彼らの活躍をもっと見たい!と感じられた。そして珠世様は舞台でも美しい(きっと千秋楽まで美しい)。
主人公の同期組,我妻善逸(演:植田圭輔)と嘴平伊之助(演:佐藤祐吾)が登場してからは,物語がさらにテンポ良く展開していく。この2人のキャラクター再現度はぜひとも実際に目で,耳で確かめてほしい。レポートにあるまじき表現だが,声も動きもシルエットも,「なんか……凄かった!」という言葉しか出てこないほどだった。
敵の総本山ともいえるキャラクター,鬼舞辻󠄀無惨(演:佐々木喜英)は,登場シーンこそ少ないものの,観る人は間違いなくそのカリスマ感に圧倒される。とくに歌の場面は必聴で,他を寄せ付けない存在感を感じさせてくれた。
最後になるが,主人公・竈門炭治郎(演:小林亮太)について。炭治郎はつきぬけた優しさと強さを持つ,誰もが応援したくなるキャラクターだ。彼が経験する過酷な運命は,舞台ではとてつもないセリフ量や数々のアクションに転換される。何度も倒れ,息を切らし,けれどただひたすら前を向く姿には,観客も心の中で「炭治郎頑張れ!」と言いたくなるに違いない。もちろん,このほかに登場するキャラクターや鬼達も,観る人の期待を裏切らないと太鼓判を押したい。
本作を体験する人は,観終わる頃にはすべての舞台キャラクターに愛着がわき,観客どうしで語り合いたくなるだろう。原作にはこの先にもまだまだ魅力的なキャラクターやストーリー展開があふれている。早くも続編が観たい! という気持ちになるような舞台だった。
<公演概要>
タイトル
舞台「鬼滅の刃」期間・劇場
【東京】 2020年1月18日(土)〜26日(日)天王洲 銀河劇場
【兵庫】 2020年1月31日(金)〜2月2日(日)AiiA 2.5 Theater Kobe原作
『鬼滅の刃』 吾峠呼世晴(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)脚本・演出
末満健一音楽
和田俊輔出演
竈門 炭治郎:小林亮太
竈門 禰豆子:髙石あかり
我妻善逸:植田圭輔
嘴平 伊之助:佐藤祐吾
冨岡義勇:本田礼生
鱗滝 左近次:高木トモユキ
錆兎:星璃
真菰:其原有沙
白髪:柿澤ゆりあ
黒髪:久家 心
珠世:舞羽美海
愈史郎:佐藤永典
鬼舞辻󠄀無惨:佐々木喜英竹村晋太朗
夛田将秀
西分綾香
星 賢太
星乃勇太
前川ゆう
森田力斗監修
集英社(「週刊少年ジャンプ」編集部)協力
一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会協賛
ローソンチケット主催
舞台「鬼滅の刃」製作委員会チケット情報
【チケット料金】 S席:9,800円/A席:7,800円(前売・当日共/全席指定/税込)公式サイト
https://kimetsu.com/stage/公式Twitter
https://twitter.com/kimetsu_stage
2020-01-18 08:19:56Z
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