全4661文字
2023年度下半期の転職市場を見渡すと、3つの傾向が見えてくる。人材要件を詳細化する動きが広がり、働く個人の要望に添おうとする企業が増えている。GX(グリーントランスフォーメーション)人材のニーズ増加も特徴である。転職市場の動向に詳しいリクルートの藤井薫氏がこれらの背景と2024年度の見通しを解説する。
筆者が勤務するリクルートでは、転職支援サービス「リクルートエージェント」のデータを基に半年ごとの転職市場動向をまとめています。今回は2023年度下半期の転職市場を「量」と「質」の両面から振り返りつつ、2024年度以降を予測してみましょう。
2023年度下半期の転職市場を「量」の観点で見ると、求人数は右肩上がりで、あらゆる職種で採用が活発でした。現在の人手不足の状況などを鑑みると、2024年度も採用にかける企業の熱は下がらないと考えられます。
求人数の多さに比して、十分な数の人材を採用するのが難しいため、採用ターゲットにも変化が見られます。この連載で以前にもお伝えしたように、業種や職種の経験を問わない「未経験者」対象の求人が増えているのです。
関連記事: 未経験や「微経験」からのエンジニア転職、成功の鍵はリスキリングとあと1つ 関連記事: ITの運用・保守から開発へ、職種を方向転換する転職には「ビジョン」が必要働く個人にとっては、これまで経験してきた業界・職種にとらわれず、スキルがマッチする求人に目を向ければ転職のチャンスがあります。選考では、業種・職種を問わず強みを発揮できる能力であるポータブルスキルや、高い業績を上げる人に共通の行動特性(コンピテンシー)を重視する企業が増えてきました。
続いて企業の採用活動並びに働く個人の転職活動の「質」に目を向けると、2023年度下半期には大きく3つの傾向が見て取れました。人材要件の詳細化、2つの「ライフフィット」の重視、企業の事業変革の拡大によるGX(グリーントランスフォーメーション)人材のニーズ増加です。
人材要件を詳細かつ明確にしてマッチング推進
1つ目の傾向は、幅広い業界で従来より詳細に採用ターゲットを定義し、人材要件に載せる入社後の担当職務を具体的かつ明確にする動きが広まっている点です。
かつての採用では、主に業種や職種の経験の有無を見て求職者とのマッチングを図るのが主流でした。入社後に担当する職務についても、ある程度は幅を持たせた説明が多かったのです。
例えば従来のWeb・インターネット業界では「幅広い仕事に、大きな裁量権を持って携わる」ことを打ち出した求人が多数見られました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴ってWebサービスの需要が高まり、多様なポジションの人材獲得が急務になってきました。デジタル化を目指す他の業界の企業とも競いつつ、採用を進めなければなりません。そこで入社後に任せる業務を詳細化・明確化し、その先のキャリアパスまで示すことで求職者に自社の魅力を訴求しようとしたのです。
この傾向は、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の運営企業などでも見られます。以前から存在する「カスタマーサクセス」などのポジションをさらに細かく分類する動きが出てきました。
例えばカスタマーサクセスには、「契約決定時から、サービスを円滑に稼働するためのサポート」「顧客に寄り添い、アップセル、クロスセルを目指す」「顧客に寄り添い、不具合の修正や機能追加など開発へ結び付ける」「カスタマーサポートとして顧客の問いに答える」といった様々な役割があります。ところが、カスタマーサクセスのポジションには最後に挙げたカスタマーサポートのイメージを強く持つ求職者が少なくありません。こうした求職者に「顧客の反応をプロダクトの改良に反映する仕事もあります」と事業開発の要素が強いことを明確にしたところ、応募が殺到したケースもあるのです。
このように求人において任せる職務や必要な能力・スキルを細かく示せる企業は、実際に採用が進んでいる傾向にあります。リクルートでは2023年3月、人事担当者に対し、人材マネジメントをテーマにアンケートを実施。求人の詳細化・明確化についての取り組み状況と、採用の進捗状況への回答を掛け合わせて分析しました。すると「採用できている」と回答した割合が47%と最も高かったのは、求人の詳細化・明確化に「取り組んでいる群」に該当する企業でした。
入社後に担当する職務の情報が詳細化・明確化すると、選考過程で注目されるのは単に特定の業界・職種の経験があるという事実にとどまりません。より具体的に「必要なスキル」に着目されるようになるでしょう。この「必要なスキル」を満たすには、転職先の企業と同業界での経験が必ずしも必要でないこともあるでしょう。
昨今はHR(ヒューマンリソース)テックのサービスも進化し、AI(人工知能)によるジョブとスキルのマッチング精度が向上しています。求職者にとっては、異業界・異業種で意外なマッチングの可能性が広がりそうです。
from "求人" - Google ニュース https://ift.tt/OSTaLj2
via IFTTT
Bagikan Berita Ini
0 Response to "2024年度転職市場予測、企業が個人の働き方・キャリアを支援する時代に - ITpro"
Post a Comment