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歓迎、伯爵家ご一行様! 『ダウントン・アビー』が映画で帰ってきた - Newsweekjapan

<貴族と使用人の生活を描いた大人気ドラマの映画版は新鮮味のなさが魅力>

ロンドンからヨークシャーの貴族の邸宅へ送られる1通の手紙──映画『ダウントン・アビー』の冒頭シーンは、テレビシリーズの視聴者(きっと観客の大半がそうだろう)ならピンとくるだろう。

思い返せば、2010年に放送開始したドラマの第1話も、グランサム伯爵一族が暮らす邸宅ダウントン・アビーに届く知らせで幕を開けた。相続人で、長女メアリーの婚約者がタイタニック号沈没で死亡したと告げる電報だ。

この悲劇で始まった愛と法律にまつわる難題続きの物語は6シーズン、計52話にわたって続いた。最終話が終わる頃には、原案・脚本・製作担当のジュリアン・フェローズならではのメロドラマ的展開の繰り返しに、上流階級の生活に飽くなき好奇心を持つはずの筆者もうんざりだった。

ところが、映画化で素晴らしい変化が生まれた。冒頭のシーンがいい例だ。手紙が運ばれる一連の場面は劇的で効果的で、スリルに満ちている。

厚みある描写はないが

今回の知らせは打って変わって明るい。ヨークシャーを訪問する英国王と王妃がダウントンに宿泊するというのだ。

ダウントンの面々を再び紹介されるのは、かつての隣人に出くわすようなもの。見覚えはあり、彼らの嫌なところも記憶にあるが、名前は思い出せなかったりする。

映画版の脚本も手掛けたフェローズは、それを当て込んでいたのだろう。料理長助手デイジーの過去など覚えていなくて大丈夫。いや、むしろ忘れていたほうがいい。シーズン6の終わりでダウントンを去ったはずなのに、映画でのデイジーは相変わらず結婚に後ろ向きな料理長助手だ。

伯爵家の人々についても同様。伯爵の母バイオレットと宿敵兼友人イザベル、メアリーと妹イーディスの関係は彼女たちの表情を見れば分かる。

映画版はストーリーが冴えている。意外性があるからではなく、登場人物全員が予想どおりの行動をするからだ。とりわけ興味深いのが使用人たち。英国王夫妻の来訪にわくわくしていたのに、従者が随行するために自分たちの出番はないと分かると、お得意の悪だくみを始める。

これこそ、フェローズ的世界の真骨頂だ。使用人たちが対決する相手は支配層ではなく、使用人という同じ立場の平民。王家の従者らが滑稽なほど傲慢で不愉快な一方、王族は誰もが高貴な精神の持ち主として描かれる。

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