「これにより、特定のコストセンターで過剰採用が生じる余地が生まれ、スパン・オブ・コントロールやレベル比の異常が助長された」と、この内部文書にはある。
ここでいう「スパン・オブ・コントロール」とは管理職あたりの直属の部下の人数を表す業界用語だ。また「レベル」とは、従業員の職務レベルを意味するテック業界用語で、それによって給与が決まる。理論上は、同じポストについて職務レベルの異なる複数の求人がなされた場合、その部門には、企画予算の想定を上回る役不足または役者不足の人員が集まる可能性がある。
アマゾンのこうした採用プロセスの欠陥は、2022年末までのテック業界の好況期に同社が拡大を急ぐあまり、チェック体制が甘くなってしまっていたことを如実に物語っている。
匿名を条件にInsiderの取材に応じた元採用担当者は、求人(アマゾン社内では「オープン・リクイジション」と呼ばれている)は「積極的に」埋められるべきものとされていた、と語る。また、アマゾンでは求人や関連する採用プロセスの監視体制がなかったために「過剰採用」の問題が生じ、リーダーらは「押し込めるところに人を押し込もう」としていたという。
大量採用の余波はアマゾン社員にとって厳しいものとなっている。アマゾンは1月に過去同社史上最大規模となる1万8000人の解雇を発表したが、3月20日には今後数週間でさらに9000人の追加削減を行うと発表した。新たな人員削減は、これまでずっと収益性が高かったクラウドコンピューティング部門のAWSも対象になるという。
なお、アマゾンの広報担当者からはコメントを得られなかった。
プロジェクト・プロセッション
前出の内部文書では、空きポストは「許可された採用人数」、オープン・リクイジションは「空きポストに対する求人」と定義されたうえで、次のように記されている。
「理論上は、前倒しで採用する権限を与えられるか、今後の既知の空きポストについて前もって公募していない限り、対応する空きポストIDがないオープン・リクイジションはするべきではない」
アマゾンの人事チームはこの問題を解決するために、当時1人で行っていた求人承認プロセスを、承認者を増やすことで強化するよう促したと、この文書にはある。管理職は求人数と実際の人員数目標をより適切に把握するために「ロスター(名簿)」と呼ばれる社内採用ツールを使用し始めたという。
AWSでは、人事チームが「プロジェクト・プロセッション」を立ち上げた。これは、会社のオープン・リクイジションを採用需要に一致させるための新しい「需要シグナリングプログラム」だと、文書にはある。このプロジェクトでは、リーダーや採用担当者が採用需要に関する情報を共有するのにロスターが使われていた。
しかし、空きポストと求人数の割合を1:1に維持するとなると「幅広い地域、レベル、職種にわたって網を投げ、割り当てられた人員数を満たす」ことができなくなるため、リーダーの中には「迅速に採用する能力が低下した」と不満を抱く者もいたという。
人員の調整が裏目に出ることも多かった。もうすぐ退職する社員の後任を採用した後で前任者も残ることになり、同じポストに2人いる状態になってしまうこともあった。
「こういったことは、競争が激しく動きの速い雇用市場に課題をもたらす可能性がある」と文書は指摘している。
必要以上の求人が募集されるのはアマゾンに限った問題ではない。採用担当者の中には、会社の成長を印象づけるために、あるいは将来の採用のために求職者を確保しようと、実際の求人と結びついていない求人情報(「幽霊求人」と呼ばれる)を掲載することもある、とウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。メタ(Meta)も先ごろ、埋まっていないポスト約5000の求人を停止すると発表した。
しかしアマゾンの場合、許可が下りていなくても大半のポストは積極的に埋められている。その一因は社内ガバナンスの欠如だと、前出の元採用担当者は言う。
アマゾンのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOは3月20日の社員向けメモの中で、同社の大量採用はパンデミックを追い風にした成長期には意味があったがもはやそうではなく、当面は経済が不透明なためコストや人員数の「合理化」を進める計画だと伝えている。そしてこう記している。
「今年の年次計画で最も重要な点は、お客様の生活とアマゾン全体を有意義に改善できると我々が信じる重要な長期的顧客体験に、しっかりと投資できるような形でスリム化を行うことです」
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