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4つのIT職種を求人データ120万件で分析、報酬水準の高低を左右するスキルとは - ITpro

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 今回は、HR(ヒューマンリソース)スタートアップである米Lightcast(ライトキャスト)が保有するシンガポールのジョブポスティングデータ(2023年3~9月分、約120万件)に着目し、アジアのIT業界におけるスキル要件の現状およびスキルと賃金との関連性について分析を試みる。IT業界において転職する際、何が賃金の差を決めているのか、スキルベースでひもといていく。

 シンガポールのジョブポスティングデータを用いて、IT関連4職種それぞれの年間給与所得分布を調べた。対象の4職種はデータサイエンティスト、ソフトウエア開発者、アプリケーション/システムプログラマー、データベース管理者である。全体を眺めると、職種間では報酬水準に大きな差異は見られない一方、同職種内で比較するとばらつきが大きいことが分かる。

 特にソフトウエア開発者は、年間給与所得の平均が7万シンガポールドル(約770万円)であるのに対し、最高が40万シンガポールドル(約4400万円)と、約6倍の開きがある。数値は求人情報に記載されている報酬水準であり、実所得とは異なる点に注意が必要だが、ソフトウエア開発者として求人情報を検索すると、こうした報酬水準のばらつきを目にすることになる。

 この同職種内での報酬水準のばらつきは、何によって生じているのだろうか。「スキル」の要件に違いがあるのではないかという仮説を基に、スキルと賃金との関連性を探っていく。

シンガポールにおけるIT職種4つの年間給与所得の分布

シンガポールにおけるIT職種4つの年間給与所得の分布

注:対象4職種の年間給与所得の中央値は約700万円(1シンガポールドル=約110円)(出所:米Lightcastデータより三菱総合研究所作成)

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報酬の高い求人ほど具体的なスキル要件を提示

 次に、報酬の水準で求められるスキルに変化があるのかを見たい。これは、2023年度のデータサイエンティストに関するジョブポスティングデータを、提示されている報酬の高い順に並べ、上位25%(高ランク)と下位25%(低ランク)に分けた上で、それぞれにおけるスキル要件の出現率をグラフ化したものである。

データサイエンティストのスキル要件出現率(報酬高水準と低水準の比較)

データサイエンティストのスキル要件出現率(報酬高水準と低水準の比較)

注:報酬水準高ランクは年収8.4万シンガポールドル以上、低ランクは4万8000シンガポールドル未満の求人を指す(出所:米Lightcastデータより三菱総合研究所作成)

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 まず全体を眺めると、多くのスキル項目において、青い線は、オレンジの線よりも上回っている。つまり、低ランクよりも高ランクのほうが高い出現率を示す傾向が見られる。報酬の高い求人情報ほど、より具体的なスキル要件が記述されている結果と解釈できる。

 日本の求人情報に照らし合わせると想像しやすいだろう。報酬が低水準の求人情報では、「データ入力」「リサーチ」「データ分析」など、抽象的な記述にとどまることが多い。場合によっては「明るく前向きな方」「長く働ける方」といった記述も散見される。求人情報と職務内容とのひも付きが明確でなく、場合によっては採用してから適性を見極めればいいといった考え方の表れともいえる。

 厳しい採用環境において、少しでも間口を広げておきたいという企業の苦肉の策と受け取るべきか、今も残る日本企業の採用上の慣習・文化と受け取るべきか。恐らくその両方なのだろう。

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