リクルートホールディングス(HD)は2022年3月期連結の売り上げ、利益いずれも過去最高となった。だが、出木場久征社長兼最高経営責任者(CEO)は決算説明会で反省の弁を語った。新型コロナウイルス禍を受けてテクノロジー人材の採用を抑えていたが、続けるべきだったと話す。
「今後の多くのイノベーションのチャンスを考えると、一定規模のテクノロジー人材の採用は、長期目線をもって継続しておくべきだった」。出木場氏は5月16日、22年3月期決算の説明会でこう話した。
リクルートHDはコロナ禍の中で、12�年に買収した米求人検索サイト会社、インディードなどHRテクノロジー事業の採用を抑制してきた。コロナ流行初期の20年度は4~6月期の新規採用をストップ。その後、採用を再開したものの例年より少なくなった。
多くの企業が、世界経済の展望が見えない状況の中、目の前で必要というわけではない人材の採用には慎重になった。企業として合理的な判断ともいえる。
それでも出木場氏が人材確保を続けておくべきだったと語る理由の一つに、コロナ禍で経済のオンライン化が進み、IT(情報技術)人材の争奪が一段と激しくなっていることが挙げられる。
ある証券アナリストは「米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフトなど大手とすでにエンジニアの奪い合いとなっており、今後さらに優秀な人材を採用することが難しくなると予想される。そうしたことを考えると、もっと積極的に取っておけばよかったという気持ちがあるのでは」と話す。
追い風��はいつまでも続かない
リクルートHDの22年3月期連結業績は、売上高にあたる売り上げ収益が前の期比26.5%増の2兆8717億円、純利益は2.3倍の2968億円と、いずれも過去最高となった。
背景にあるのはHRテクノロジー事業の成長だ。同事業の調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は4.4倍の2931億円で、リクルートHD全体の6割以上を占める。CLSA証券の加藤純アナリストは「想定以上の伸びだった」と振り返る。
HRテクノロジー事業の売り上げが75%以上を占める米国では、経済が活性化する中で採用ニーズが増加するなど労働市場の需給がひっ迫し、業績を押し上げた。
23年3月期連結の売上予想は15%増の3兆3000億円で、HRテクノロジー事業は10~20%の増収を見込む。
ただ、リクルートHDは追い風がいつまでも続くとは見ていない。
決算資料では「労働市場の需給の乖離(かいり)は23年3月期を通じて次第に縮小していくことを想定している」と明記。UBS証券の福山健司アナリストも「22年度後半には落ち着いてくるのではないか」と指摘する。
だからこそ重要になるのが、中長期で掲げるインディードのビジネスモデルの変革だ。出木場氏が人材確保を続けておくべきだったと語る戦略上の事情がここにある。
現在のインディードの事業は、求職者が企業の求人情報を閲覧するたびに料金を得る「クリック課金」型のモデル。求人情報をクリックすれば、採用につながらなくても収益を得られる。これを改め、優秀な人材が面接に至ったり採用されたりといった実績に応じて見返りを得る「成功報酬」型に近いかたちへシフトするビジョンを示す。
出木場氏は「1採用当たりでいうと給料の1%も課金できていない。何とかしてこれを2%、3%としていく」と収益拡大を狙う。現在は採用、不採用にかかわらず一定の金額を得ているが、採用された場合などに一段と高い金額を得られる仕組みを整え、収益を増やす。
この変革はインディードを利用する企業にとってもメリットとなり得る。クリック課金型での支払いに企業からの不満がないわけではなく、「今後は成果が出ないサービスには課金してくれなくなる可能性もある」(アナリストの福山氏)。リクルートHDはそうした流れも読んで、事業の舵(かじ)を切ろうとしている。
「瞬時にマッチング」が理想
リクルートHDが新たな事業モデルで収益を出すには、求職者と企業とのマッチングの成功率を向上させる仕組みが欠かせない。人工知能(AI)の�活用などで、「より短期間に」「最適な相手と結び付ける」必要がある。そこには同社が以前から掲げる「ボタンひとつで就職できる世界」という理想がある。そうした道筋のためにテクノロジー人材が必要なのだ。
HRテクノロジー事業の22年3月時点の従業員数は約1万3000人。23年3月期には新たに4000人規模で採用していく予定だといい、広告宣伝費も含め約1000億円の費用増加を見込む。
会見で反省の弁を語った出木場氏。インディードの再加速に向けた強い意志が読み取れる。
(日経ビジネス 藤中潤)
[日経ビジネス電子版 2022年5月27日の記事を再構成]
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